映像制作の見積もりに聞きなれない言葉、「特機」(トッキ)という項目があります。
ご質問を頂くことも増えてきましたので、今回は「特機」についてご紹介します。
クリエイティブの幅を広げる特機
映像制作における”特機”は、通常の撮影機材構成(三脚・カメラ)とは別の特殊機材のことを指します。
- レールに沿って水平な縦・横に対する動きをスムーズにする「レールドリー」「スライダーレール」
- 高さ低さに対してスムーズな動きを付ける「カメラクレーン」
- 縦横無尽にブレることなく被写体を追える「スタビライザー」
- 近年話題になっている空撮用機材「ドローン」
などが挙げられます。
(簡易撮影での特機例)
これらは動きによって名称や形がそれぞれ異なりますが、基本的な要素として「カメラそのものが動く(カメラワークをする)こと」を目的として使用されます。三脚や、手持ちでの撮影では難しい映像構成を特機を活用して作り出していきます。
では、カメラそのものが動くことによって何が得られるのでしょうか?
必ず発生する”動かない(動けない)被写体”の撮影
「カメラが動くことで何が得られるか?」よりも、「カメラが動かないことで生じる問題は何か?」を考えた方が分かりやすいかもしれません。
そこには、映像制作を行う上で、通常の撮影方法である「三脚でカメラを固定した撮影」で撮り続けた際に生じる、”ある問題”があります。
代表的な例は、「動かすことのできない建造物の撮影」や「動かすことに違和感を感じる商品商材の撮影」などです。
建築物や商品を魅力的に撮影し、視聴者に伝える必要があるにも関わらず被写体そのものが動かない(動けない)ため、間延びした退屈な映像になってしまう事があります。せっかくの”映像表現”であるにも関わらず静止画と同じ撮影方法を取ることで、”写真”と変わらない状態になってしまうのです。
もちろん、「カットを割る」など映像ならではの表現方法はありますが、最も有効な解決策の一つとして、特機が登場します。
珍しさや興奮を与えるカメラワーク
映像制作の成功に近づく鍵の一つに、「画面内に視聴者を引き込む」ことがあります。
それらは理屈では説明することのできない、興奮・珍しさ・格好良さなどの感覚的な演出が必要となってきます。特機によるカメラワークは、それら感覚的な揺さぶりに長けており、多言語に翻訳されて世界中に発信されるハリウッド映画の演出にも、「言葉より有効な演出方法」として多用されています。
撮影技術面の演出を加えることで間延びを防ぐだけではなく、視聴者が映像に対して一体感を感じるメリットが生まれてきます。
特機の使用シーンと、その映像がまとまった参考例(スタビライザー)
プロとアマチュアの差が現れる映像演出
特機で撮られた映像を見分けられるようになると、プロが撮影した映像の特機使用頻度の多さに驚かれる方も多いようです。
近年、一般用ビデオカメラのスペックアップ・低価格化により、誰もがカメラ一台で美しい映像を撮影できるようになりました。しかし、一般的には特機をフル活用した映像演出までに至っていません。それは、映像演出としての扱いが難しいこと。そして、特機は日常使用するものではないこと。また、高額であることがあります。
一般の方々と、プロの撮影素材における大きな差は、”被写体の動きに依存した映像”と”被写体とカメラワーク双方への演出を掛け合わせた映像”の違いなのかもしれません。前者は記録者でしかなく、後者は表現者であると私は考えています。
さいごに
今回は、”特機”について紹介しました。これらは”とにかく使えば良い”という物ではありませんが、一つのクオリティアップのオプションとして検討しても良い項目であると考えています。
当社では、これら特機を自社にて所持管理することによって、各案件の映像演出向上に活用しています。
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