アドアーチ株式会社、代表の白川です。
弊社は、2018年末をもって動画制作の相見積もりサービスからの受注を基本的に受けない方針としました。
「一括で動画制作について価格帯を確認できる、相見積もりサービス」は便利なシステムですが、動画制作業者としてなぜ一括見積もりを辞めたのか。業界状況を踏まえてご紹介します。
はじめに。一括の動画相見積もりサービスとは
一括の動画相見積もりサービスとは、動画制作を依頼する先の目処が付いておらず、発注先の紹介と、見積もり比較を同時にできるものです。
引っ越しや中古車買取等、「たまにしか利用せず、業者や相場が分からない場合」の相見積もり利用が一般的でしたが、近年サービスの集客そのものがWebへと移行したことで、ほぼ全てのジャンルにおいて相見積もりサービスが存在しています。
動画制作においての相見積もり
近年、動画広告・動画を活用したプロモーションのハードルが下がり、動画制作を希望する企業が急増しています。かつては動画広告=TVCMのような大々的な広告手法であったため、企業としても”動画”は手を出しにくい広告手法でしたが、昨今、動画広告の主戦場がWEBへと代わり、動画広告の参入ハードルが大幅に下がったことが一因です。
動画広告市場規模は、推計・予測においても右肩上がり。面白いことにこの市場規模は伸びが良く、予測については過去いずれも上方修正が行われています。そのため、数値以上の市場拡大は十分にあり得ます。
動画の発注先が分からない問題
競合他社がビジネスに動画を活用していく環境の中、いざ、動画広告を始めようと思い立った企業にとって、まず初めに当たる壁は「発注先がわからない問題」です。
この問題は非常に根深く、私が大学を卒業した約10年前は、存在する映像制作会社のほぼ全てを把握できるようなニッチな業界でした。が、今や弊社を含め把握できないほどの制作会社が存在しています。
誰もが知る映像制作会社は、以下のような特徴があります。
- 確実に高品質の制作物が出来上がる体制・ノウハウがある。
- 老舗であるが故に予算が高額
- TVCMや映画などで長期のスケジュールが抑えられている
- 新規取引で発注することが難しい。
その一方で、新参の比較的新しい会社は柔軟性がありますが、WEB動画市場拡大に目を付けた映像ノンキャリアの制作会社も急増しており、クオリティを無視した低価格重視の制作体制であったりと、市場は混沌状態です。
なぜ弊社が相見積もりサービスからの受注を辞めたか。相見積もりがもたらした業界図
「発注先が分からない問題」から相見積もりサービスを活用する企業が増加していますが、企画コンペを行わない相見積もりが横行し、「動画広告を元に、ビジネスを活性化させる等の本質から外れた価格競争」が勃発しています。
以前弊社記事でも記載したように、(動画制作の見積もり料金って?クオリティを保証する依頼先選び)動画制作の主な費用は人件費・実費が占めています。
スタッフの移動宿泊費・機材費などの実費は削減することができないため、価格競争の際は自ずと人件費を削る必要性が出てきます。
人件費を削ると、制作会社としては、
- 自社人件費を賄うために、該当社員を他案件にも携わらせる必要がある:複数案件掛け持ち
- 1本にかける制作時間を削減せざるを得ない:実稼働時間の減少
- 映像制作の特性上、かけた時間とクオリティはほぼ比例し、もう少し粘ればクオリティが上がる部分を諦めざるを得ない:クオリティの問題
など、クライアント満足度やクオリティ低下に直結する問題に発展していきます。
弊社が相見積もりサービスで価格競争を行うことを辞めた理由はまさにこの、「価格競争に付き合っていると、クオリティの担保が難しい」ことにあります。
“結果を出す”クオリティが重視されていく今後のWEB動画広告
映像・動画業界は「作れば結果が出る」から、「クオリティを上げないと結果が出ない」を繰り返しています。
かつて映画が珍しい時代は、映画を撮ればほぼ全てがヒットし、次第に「面白さ」「特徴」「話題力」などヒットに必要な要素が加わっていきました。つまり、視聴者の評価も厳しくなり”本物”だけが評価されるように。
それは、TVCMも同じく、「TVCMを放送すれば、多くの人がとにかく目にする。知名度が上がる」から、TV番組の多様性から「ターゲットに合わせた、話題力・印象に残すTVCM」へ。
今まさにWEB動画広告が、「作ったら、ある程度結果が出る」から、「動画としての完成度(ゴールを的確に捉え、表現されたもの)の高い動画だけが生き残る」へ変化しつつあります。
さいごに。見積もりには企画提案を含めた比較が必要
今回は動画相見積もりサービスと、業界現状について書かせて頂きました。
適正な価格で制作することは必要ですので、相見積もりサービスを活用するメリットはありますが、今後は企画コンペを伴うゴール達成のための見積もり比較が必須となるかと考えています。
相見積もりにおける企画コンペの重要性については、こちらで表記しておりますので、ぜひご覧ください。